屋上遊園地が消えた理由
- LAPIN PDG
- 1月6日
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かつて日本のデパートの象徴だった「屋上遊園地」。昭和のファミリーレジャーの象徴が、なぜ令和の今、ほとんど姿を消してしまったのか。
そこには単なる「レジャーの多様化」だけではない、デパート側の経営戦略の転換と、シビアな経済合理的理由が隠されています。ビジネスの視点からその背景を3つのポイントで解説します。
1. 収益構造のミスマッチと維持コストの増大
屋上遊園地が衰退した最大の理由は、「面積あたりの収益性(坪単価)」の低さです。
・低い客単価と回転率
1回100円〜200円程度の遊具では、地価の高い都市部デパートの賃料相当額を稼ぎ出すことが困難になりました。
・建築基準法と耐震基準
1995年の阪神・淡路大震災以降、耐震基準が厳格化されました。重い大型遊具を屋上に設置し続けるには、建物全体の補強工事に莫大なコストがかかります。
・消防法の厳格化
安全確保のための人員配置や設備更新のコストが、収益を圧迫しました。
2. 「シャワー効果」の弱体化
かつて屋上遊園地は、デパートのマーケティング戦略において「シャワー効果」の起点として機能していました。
・シャワー効果とは
最上階の催事場や遊園地に顧客を呼び込み、そこから下の階(婦人服や食品売り場など)へ買い物をしながら降りてきてもらう戦略。
しかし、消費者の購買行動が変化しました。
・目的買いの増加
家族で一日中デパートで過ごすスタイルから、特定のブランドやアイテムを目がけて来店するスタイルへ移行。
・垂直移動の分断
エレベーターの高速化や直行運転により、途中の階に立ち寄る確率が低下し、屋上へ集客する投資対効果が薄れました。
3. レジャーの「外部化」と体験価値の変容
デパートそのものの存在意義が「生活のすべてが揃う場所」から、より専門性の高い「ライフスタイルの提案の場」へとシフトしたことも要因です。
・競合の台頭
郊外型ショッピングモール(イオンモール等)や、東京ディズニーリゾートをはじめとする大型テーマパークに「子供の遊び場」としての機能が移転しました。
・ターゲット層の変化
デパートのメイン顧客層が「ファミリー層」から、購買力の高い「富裕層・シニア層」や「インバウンド客」に絞り込まれました。これに伴い、屋上は遊園地から「洗練された庭園」や「ビアガーデン」「BBQスペース」といった、より高単価を狙える空間へとコンバージョン(転換)されています。
■経営資源の「選択と集中」
屋上遊園地の消滅は、デパートが生き残りをかけて不採算部門を切り離し、より収益性の高い体験価値(コト消費)へ経営資源を集中させた結果と言えます。
現在、一部の店舗では「食」や「緑」をテーマにした新しい屋上活用が進んでおり、昭和の遊園地とは異なる形での顧客体験の再構築が図られています。



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