生成AIブームがPC価格を高騰させている!
- LAPIN PDG
- 2025年12月15日
- 読了時間: 3分

〜部品争奪戦の構図〜
現在、生成AI(Generative AI)の爆発的な普及は、企業の生産性向上を促す一方で、私たちが業務で利用するパソコン(PC)の価格高騰という形で、予期せぬコスト増を招いています。
これは一時的な需給の偏りではなく、半導体市場の構造的な変化によるものです。本記事では、この価格高騰の核心にある理由と、それがビジネスに与える影響について解説します。
1. サーバー向けAI需要による「部品争奪戦」
PC価格高騰の最大の要因は、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)を動かすAIサーバー(データセンター)向け部品の需要急増です。
1-1. メモリ・SSDの供給不足と価格高騰
生成AIのトレーニングや実行には、従来の何倍もの処理能力とデータ転送速度が求められます。特に以下の部品で需給がひっ迫し、PC向け部品の価格を押し上げています。
・DRAM(メインメモリ)
AIサーバーの心臓部であるNVIDIAなどのAIチップには、HBM(High Bandwidth Memory:高帯域メモリ)という超高速・高収益のDRAMが搭載されます。
メモリメーカーは、利益率の高いHBMの生産を優先するため、一般的なPCに使われる汎用DRAMの生産キャパシティをシフトさせています。
結果として、PC向けDRAMの供給量が減少し、価格が急騰しています(中には数カ月で数倍に高騰した例も報告されています)。
・NANDフラッシュ(SSD)
AIインフラの拡張に伴い、データセンター向けのエンタープライズSSDの需要も大幅に伸びています。
これもまた、メーカーがエンタープライズ製品を優先することで、一般のPCやコンシューマ向けSSDの供給が圧迫され、価格上昇につながっています。
1-2. 製造リソースの奪い合い
PC向け部品とAIサーバー向け部品は、用途は違えど、製造工程の一部(ウェハの加工など)を共通にしています。メーカーが高収益なAI向け製品(HBMなど)に生産リソースを集中させることが、低収益なPC向け部品の供給不足を招く、という構図です。
2. 「AI PC」への移行による新たなコスト増
もう一つの要因は、AI機能の処理をクラウドだけでなくPC本体で行う「AI PC」への市場の移行です。
2-1. NPU搭載による高性能化
Microsoftの「Copilot+ PC」に代表される新しいAI PCは、AI処理専用の半導体NPU(Neural Processing Unit)をCPUに統合しています。
このNPU搭載による処理能力の向上は、PCの製造コストの上昇に直結します。
企業が生産性やセキュリティ強化のためにPCの入れ替え(リプレース)を進める際、AI PCが新たな標準となることで、購入単価が底上げされることになります。
2-2. Windows10サポート終了と更新需要の集中
一部の企業では、Windows10のサポート終了(EOS)や、GIGAスクール構想(教育現場へのPC導入)の第2期による大規模な更新需要が重なっています。
AI PCが主流となるタイミングで、数百万台規模の「買い替え需要」が集中することで、部品供給のひっ迫に拍車がかかり、市場全体の価格を下支え、あるいは高騰させる要因となっています。
■ビジネスパーソンが取るべき対応策
PC価格の高騰は、企業のIT投資計画やコスト戦略に直接影響します。
・短期的な計画
今後もしばらくは価格高騰のトレンドが続く見込みです。「値下がり待ち」は得策ではないかもしれません。急ぎでPCが必要な場合は、価格動向を注視しつつ、必要なタイミングを見極めて購入することが賢明です。
・長期的な戦略
AI PCへの移行は避けられない流れです。ローカルでのAI処理がもたらす生産性向上やセキュリティメリットと、初期投資のコストを天秤にかけ、全社的なITリプレース計画を立て直す必要があります。
生成AIブームは、半導体市場に前例のない構造変化をもたらしました。この変化を正しく理解することが、今後の事業計画におけるIT投資リスクを管理する鍵となります。



コメント