派遣法改正で最も「得をした」のは誰か?
- LAPIN PDG
- 2025年11月16日
- 読了時間: 3分

〜ビジネスパーソンが知っておくべき実態〜
労働者派遣法の改正は、その都度、「派遣で働く人(派遣労働者)」の待遇改善や雇用の安定化が目的とされてきました。
しかし、長年にわたる改正の歴史を俯瞰すると、短期的・個別に見れば派遣労働者が得をする面はありますが、最も大きな恩恵を継続的に受けているのは「企業(特に派遣先企業と一部の派遣元企業)」であると考察されます。
■得をしたのは「企業」
最も「得をした」と言える層は、主に以下の2つです。
1. 派遣先企業
〜柔軟な人材活用とコストメリット〜
労働者派遣法が改正されるたびに、企業はより「柔軟」に人材を活用できるようになりました。
・規制緩和と活用の自由度向上
1999年の原則自由化や2004年の製造業務への派遣解禁など、派遣が認められる業務範囲の拡大や期間制限の見直しが進みました。これにより、企業は繁忙期や専門性の高い業務に、必要な時に必要な期間だけ即戦力の人材を確保できるようになりました。
・「雇用の調整弁」としての機能
特に景気の変動期において、派遣労働者は「雇用の調整弁」として機能しやすい側面があります。正社員を解雇するよりも容易に契約を終了できるため、人件費の固定費化を防ぎ、経営リスクを低減することに成功しました。
2. 成長した大手派遣元企業
〜市場拡大と規制対応力〜
派遣市場の拡大と規制強化の波に乗って成長を遂げた大手派遣元企業も、結果的に大きな利益を得ています。
・市場規模の拡大
規制緩和により、派遣市場は急速に拡大しました。これに伴い、大手派遣元企業はマージン(派遣料金と派遣労働者の賃金の差額)を通じて安定的な収益を確保しました。
・法改正対応の優位性
2020年の「同一労働同一賃金」導入など、規制が複雑化するほど、法律対応やコンプライアンス体制を整備できる資金力・組織力のある大手が優位になりました。特に労使協定方式(厚生労働省の調査では大多数の派遣元が選択)の導入は、派遣先企業が賃金情報などを開示する負担を嫌った結果であり、この方式をスムーズに運用できる大手派遣元は、結果的に多くの取引先を獲得しやすくなりました。
■派遣労働者はなぜ「最も得をした」とは言えないのか?
派遣労働者も「同一労働同一賃金」による待遇改善や、キャリア形成支援の義務化といった恩恵を受けました。しかし、「最も得をした」とは言い難い理由がいくつかあります。
・雇用の不安定性の継続
期間制限(個人単位3年、事業所単位3年)の導入は、かえって雇用の不安定性を固定化する要因にもなりました。3年ルールが、派遣労働者の無期雇用化や直接雇用への道筋を阻害しているという指摘も根強くあります。
・マージン率の不透明性
派遣料金から派遣労働者に支払われる賃金(マージン)の適正性については、情報開示が義務化されたとはいえ、依然として派遣元企業の利益率が高く維持されているケースが多いです。
・同一労働同一賃金の実効性
派遣労働者の待遇改善が目的でしたが、実務上、派遣先企業が詳細な情報提供に消極的なため、比較対象となる正社員の待遇水準が不明確になりがちで、期待されたほどの実効性が得られていないとの見方もあります。
■ビジネスパーソンへの示唆
派遣法改正の歴史は、「規制と市場ニーズの綱引き」の結果です。
企業経営者や管理職の立場にあるビジネスパーソンは、この法の目的(派遣労働者の保護)と、実務上の結果(企業の柔軟性向上)とのギャップを理解し、単なるコスト削減策ではなく、「コンプライアンス遵守」と「優秀な人材の獲得・定着」の観点から、派遣社員の待遇やキャリア形成を考える必要があります。



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