カカオ2050年問題
- LAPIN PDG
- 1月9日
- 読了時間: 3分

〜チョコレートが超高級品になる〜
「カカオ2050年問題」は、単なる食卓の危機ではなく、サプライチェーンの崩壊と投資リスクを孕んだ、ビジネスパーソンが無視できない構造的な課題です。
この記事では、その背景、企業に与えるインパクト、そして先進的な取り組みについて解説します。
■カカオ2050年問題とは
〜チョコレートが「高級品」になる日〜
「カカオ2050年問題」とは、地球温暖化に伴う気候変動により、2050年までにカカオの栽培適地が現在の半分以下に減少すると予測されている問題です。
世界を代表する食品メーカーや研究機関が警鐘を鳴らしており、対策を講じなければ、チョコレートは現在の価格では維持できず、一部の富裕層のみが楽しむ「超高級品」へ変わってしまうリスクがあります。
■主な要因
〜3つの構造的リスク〜
1.気候変動による「栽培適地」の喪失
カカオは「北緯20度〜南緯20度(カカオベルト)」という極めて限定的な地域でしか育ちません。2050年には気温が平均$2.1^{\circ}C$上昇すると予測されており、乾燥化が進むことで現在の主産地(コートジボワール、ガーナ等)の多くが栽培に不向きになります。
2.病害虫の蔓延
気温上昇と湿度の変化は、カカオの天敵である「さび病」や「スワール・シュート・ウイルス」などの病害を加速させます。これにより、収穫量が劇的に低下するリスクが高まっています。
3.生産者の深刻な貧困と労働問題
カカオ農家の多くは小規模農家で、極度の貧困状態にあります。次世代の担い手が育たず、さらに「児童労働」という深刻な人権リスクもサプライチェーンに内在しており、ESG投資の観点からも大きな課題となっています。
■ビジネスへのインパクトとリスク
この問題は、菓子業界のみならず、物流、小売、そして投資市場全体に波及します。
1. サプライチェーンの脆弱化とコスト高騰
2024年初頭には、天候不順によりカカオの先物価格が一時的に銅の価格を超えるほどの異常高騰(カカオショック)を見せました。原材料費のボラティリティ(変動幅)の拡大は、企業の収益構造を直撃します。
2. 「シュリンクフレーション」の限界
内容量を減らして価格を据え置く「実質値上げ(シュリンクフレーション)」はすでに限界に達しつつあります。今後は代替素材の活用や、抜本的な価格転嫁を迫られる場面が増えるでしょう。
3. 法規制とレピュテーションリスク
EUでは「森林破壊防止法(EUDR)」などが施行され、環境破壊や人権侵害を伴うカカオの輸入が厳格に制限され始めています。コンプライアンスを軽視する企業は、市場から淘汰されるリスクがあります。
■企業の生存戦略
〜注目の先進事例〜
危機をチャンスに変えるべく、グローバル企業や日本企業は以下の戦略を打ち出しています。
・気候順応型の農業
アグロフォレストリー(森林農業)の導入。日陰を作る木(シェードツリー)を植え、温度上昇を防ぎつつ生物多様性を守る。
・テクノロジーの活用
ゲノム編集による耐熱性・耐病性品種の開発。AIを活用した画像診断による病害の早期発見。
・直接支援と透明性
明治(meiji)の「メイジ・カカオ・サポート」など、企業が直接産地へ出向き、栽培技術指導や井戸の設置などのインフラ支援を行う。
・代替素材の開発
カカオを使わずに、ひまわりの種や大麦、発酵技術を用いてチョコレートの風味を再現する「代替カカオ(カカオフリー)」の研究。
■私たちに求められる視点
カカオ2050年問題は、一つの原材料の不足という枠を超え、「持続可能な調達がビジネスの存続そのもの」であることを象徴しています。
・「安い」には理由がある
調達コストの低さは、将来の供給途絶リスクを先送りしている可能性があります。
・認証ラベルの重要性
フェアトレードやレインフォレスト・アライアンス認証の商品を選ぶことは、自社のリスクマネジメント(安定供給の確保)にも直結します。



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