新入社員の焦燥
- LAPIN PDG
- 4月27日
- 読了時間: 2分

〜ビジネス・ショート・ショート〜
大手電機メーカーの内定通知を握りしめた木下の指先は、歓喜に震えていた。憧れの企業、将来への希望。入社式を終え、真新しい社員証を胸に臨んだオリエンテーションでも、木下の心は高揚しっぱなしだった。
営業部への配属が決まり、エネルギッシュな先輩社員、田中から営業の基礎を教わる日々が始まった。「お客様のニーズを掴むのが営業の醍醐味だ!」田中の言葉は熱く、木下の胸に響いた。
しかし、その熱意は徐々に冷めていった。田中は時に厳しい口調で木下のミスを指摘し、容赦のないダメ出しを繰り返した。「こんな資料じゃ、話にもならない!」「一体何を見てきたんだ!」 木下の熱意は萎縮し、田中からの指導を、指導というよりむしろ 個人的な攻撃のように感じるようになっていた。
耐えかねた木下は、入社からわずか三ヶ月で退職願を提出した。「こんな会社、やってられるか!」勢い込んだものの、現実は甘くなかった。
再就職活動は難航を極めた。面接官は皆、木下の早期退職の理由を訝しんだ。「せっかく入った大手を、なぜすぐに辞めてしまったんですか?」「もう少し頑張ってみようとは思わなかったんですか?」
畳み掛けるような質問に、木下は言葉を失った。
あの時、もう少し食らいついていれば。先輩の言葉を、イジメではなく指導として受け止められていれば。後悔の念が、じわじわと木下の心を締め付けた。しかし、時間は巻き戻せない。焦燥感だけが、木下の胸に重くのしかかっていた。
おしまい
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