なぜ日本人の収入は増えないのか?
- LAPIN PDG
- 2025年7月2日
- 読了時間: 4分

〜ビジネスパーソンが知るべき構造的問題〜
「頑張って働いているのに、なぜか給料が上がらない」「物価は上がるのに、手取りは増えない」と感じているビジネスパーソンは少なくないでしょう。日本人の収入が長らく停滞している背景には、単なる個人の努力ではどうにもならない構造的な問題が潜んでいます。今回は、その主要な理由を解説します。
1. デフレ経済と低成長の長期化
日本経済は、1990年代後半からデフレ(物価の下落)と低成長に苦しんできました。
〇デフレによる賃金への圧力
物価が下がると、企業の売上も伸びにくくなります。企業はコスト削減を迫られ、その一環として賃上げに慎重になる傾向があります。消費者も将来の不透明感から消費を控え、さらにデフレが進行するという悪循環に陥ってきました。
〇GDP成長率の低迷
経済全体のパイが大きくならない限り、一人ひとりの取り分も増えません。日本の名目GDP成長率は長期にわたって低水準で推移しており、これが賃上げの原資を不足させています。
2. 労働分配率の低下
労働分配率とは、企業が生み出した付加価値のうち、人件費として従業員に分配される割合を示す指標です。
〇内部留保の積み増し
企業は将来への備えや投資のため、利益を内部留保として貯め込む傾向が強まっています。これは、バブル崩壊後の不安定な経済状況や、リーマンショックのような大規模な経済危機を経験したことで、企業がより慎重になった側面もあります。しかし、結果として賃金に回るべき資金が抑制されてしまっています。
〇グローバル競争の激化
企業は国際的な競争にさらされており、コスト競争力維持のために人件費を抑えようとするインセンティブが働いています。
3. 非正規雇用の増加と労働市場の二極化
正社員と非正規社員の賃金格差は、全体の収入水準を押し下げる要因となっています。
〇非正規雇用の拡大
企業は景気変動への対応や人件費抑制のため、パートタイマー、契約社員、派遣社員といった非正規雇用を増やしてきました。非正規雇用は、正社員に比べて賃金水準が低く、昇給や賞与も限定的であることがほとんどです。
〇正規・非正規の格差
同じ仕事をしていても、雇用形態によって賃金に大きな差がある状況は、労働市場全体の賃金水準を停滞させる一因となっています。特に若い世代で非正規雇用が増加したことは、生涯賃金にも影響を与えています。
4. 終身雇用制度と年功序列の慣習
かつて日本企業の強みとされた終身雇用と年功序列は、現代においては賃金体系の硬直化を招いている側面もあります。
〇若年層へのしわ寄せ
年齢や勤続年数に応じて賃金が上がる年功序列制度は、特に若手社員の賃金上昇を抑制する傾向があります。高齢社員の給与水準を維持するために、全体のパイが増えない中で若手の賃上げが難しくなる構図です。
〇労働移動の停滞
終身雇用を前提とする日本では、転職によるキャリアアップや賃上げの機会が欧米諸国に比べて少ない傾向にあります。これにより、市場原理に基づいた賃金の上昇が起きにくい状況があります。
5. 生産性向上の停滞
労働生産性とは、従業員一人あたり、または労働時間あたりで生み出す付加価値のことです。日本の労働生産性は、主要先進国と比較しても伸び悩んでいます。
〇デジタル化の遅れ
多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでおらず、非効率な業務プロセスが残っているケースが見られます。これにより、個人の生産性が十分に高まらず、賃上げの原資が生まれにくい状況です。
〇R&D投資の伸び悩み
新たな技術やサービスの開発に向けた研究開発投資が停滞していることも、長期的な生産性向上を妨げる要因となります。
■まとめ
日本人の収入がなかなか増えないのは、デフレ経済、労働分配率の低下、非正規雇用の増加、硬直化した賃金体系、そして生産性向上の停滞といった複数の要因が複雑に絡み合っているためです。これらの課題は、企業や政府だけでなく、私たちビジネスパーソン一人ひとりが認識し、自身のキャリアや働き方を考える上で重要な視点となります。



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