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赤字支店からトップセールスが消えた理由

The Reason Top Salespeople Disappeared from Unprofitable Branches
The Reason Top Salespeople Disappeared from Unprofitable Branches

〜エース社員を「劇薬」にしてはいけない〜


今回は簡単な思考実験です。経営者が陥りがちな組織マネージメントのミスと期待と現実の乖離が招く落とし穴を検証しましょう。


この思考実験に正解はありません。似たケースに直面したときの参考にしてください。




ある赤字続きの支店を立て直すため、経営層は全社で成績トップの優秀な社員を派遣した。


1年後、支店の業績は劇的に改善したが、赤字自体は解消されなかった。既存の支店社員たちの成績は一切改善されておらず、そのままだったからだ。


そして半年後、派遣されたトップ社員は会社を辞めてしまった。



一見すると「エースを投入して数字が上がった」という一時的な成功体験に見えるこのストーリーですが、結末は最悪の「優秀な人材の流出」です。


なぜ、劇的な業績改善をもたらした優秀な彼は、会社を去る決断をしたのでしょうか。この思考実験を紐解くと、経営層が陥りがちな「組織マネジメントの3つの罠」が見えてきます。




1. 「プレイヤー」と「マネージャー」の役割の混同


経営陣は彼に「支店全体の底上げ(マネジメントや育成)」を期待していたのかもしれません。しかし、彼は純粋な「トッププレイヤー」として自分一人で数字を作ってしまいました。


名選手が必ずしも名監督になるとは限りません。もし彼に「育成のミッション」が明確に伝わっておらず、マネジメントの権限も与えられていなかったとしたらどうでしょうか。彼は「自分が一人で売上を稼いで支店を救うしかない」という状況に追い込まれ、孤軍奮闘を強いられることになります。




2. フリーライダー(タダ乗り)の発生と学習性無力感


既存の社員たちの成績が改善しなかったのは、能力の問題だけではありません。優秀な彼がすべての数字をカバーし、尻拭いをしてしまったからです。


「彼に任せておけば支店の数字はなんとかなる」という甘えが生じ、組織全体の当事者意識が完全に喪失しました。自分がどれだけ身を粉にして働いても、周囲は変わろうとせず、あぐらをかいている。このような「成果のフリーライド(タダ乗り)」が横行する環境は、優秀な人材のモチベーションを最も鋭く削ぎ落とします。





3. 評価のミスマッチと燃え尽き症候群(バーンアウト)


最も致命的なのは「評価システム」です。彼は支店の業績を劇的に押し上げた立役者ですが、結果として「支店は赤字」のままです。


もし会社が「支店が依然として赤字だから」という理由で、彼のボーナスや評価を下げていたとしたらどうでしょうか。個人の成績トップ時代よりも過酷な労働を強いられ、他人の分まで数字を背負わされた挙句に、かつてより評価まで下がる。この理不尽な構造に気づいた時、彼が会社に見切りをつけるのは当然の帰結です。彼は燃え尽きたのです。




■経営者が打つべきだった「次の一手」とは


この悲劇を防ぐためには、経営陣は「個人の才能」に依存するのではなく、組織の構造そのものに手を入れる必要がありました。


・ミッションの明確化と権限移譲

彼を派遣する際、「個人の売上」ではなく「チームの育成」や「業務プロセスの改善」をミッションとし、それに必要な人事権や評価権限をセットで渡すべきでした。


・評価軸の分離

支店の赤字責任を彼一人に負わせず、彼自身の「立て直しへの貢献度」を正当に評価する特別なKPIを切り分けて設定する必要がありました。


・既存社員の代謝とメス

彼への依存を断ち切るため、改善が見られない既存社員に対しては、エースの力で数字を覆い隠すのではなく、根本的な配置転換や厳しい評価を行うべきでした。


優秀な人材は、理不尽な環境や評価の歪みに誰よりも早く気づきます。彼らは経営の失敗を帳消しにする「魔法の杖」ではありません。


組織の構造的な問題を一人の才能だけで解決しようとするマネジメントは、最終的に「最も失ってはいけない人材を失う」という重い代償を払うことになります。あなたの会社でも、特定のエース社員に依存しすぎることで、静かに彼らの心が離れ始めてはいないでしょうか。


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©2023 合同会社ラパンサービス

Écrit par Hideo Yamamoto.

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