なぜ今、上場廃止を選ぶ企業が増えているのか?
- LAPIN PDG
- 2025年7月26日
- 読了時間: 4分

〜ビジネスパーソンが知るべき背景〜
近年、株式市場からの上場廃止を選択する企業が増加傾向にあります。かつては経営不振による選択というイメージが強かった上場廃止ですが、現在では戦略的な経営判断として行われるケースも少なくありません。このトレンドの背景には、どのような要因があるのでしょうか?
1. ガバナンス改革と企業価値向上の圧力
東京証券取引所は、2022年4月に市場再編を行い、上場企業に対してより高いガバナンス基準と企業価値向上へのコミットメントを求めています。これに伴い、以下のような理由から上場廃止を選ぶ企業が現れています。
〇抜本的な改革の実行と短期的な業績へのプレッシャー回避
上場企業は四半期ごとの業績開示や株主からの scrutinizing に常に晒されます。短期的な視点に捉われず、中長期的な視点で大胆な事業構造改革や投資を行うためには、非公開化して外部からの目を気にせず集中できる環境が望ましいと判断するケースがあります。
〇非効率な上場維持コストの削減
上場を維持するためには、監査費用、開示資料作成費用、IR活動費用など、多額のコストが発生します。特に企業規模が小さい場合や、上場メリットを十分に享受できていないと判断する企業にとっては、これらのコストが重荷となり、上場廃止を選択する動機となります。
〇親子上場の解消とグループ経営の最適化
親会社が子会社を上場させている「親子上場」は、利益相反や少数株主保護の観点から問題視されることがあります。グループ全体の経営資源の最適配分や迅速な意思決定を目指し、子会社を非公開化する動きが活発化しています。
2. アクティビストの台頭と経営の自由度確保
近年、日本の株式市場でも「物言う株主」として知られるアクティビストの活動が活発化しています。彼らは、企業に対して短期的な株主還元や事業売却などを強く要求することがあり、経営陣にとっては大きなプレッシャーとなります。
〇アクティビストの介入回避と機動的な経営
アクティビストからの提案は、必ずしも企業の長期的な成長戦略と合致しない場合があります。このような介入を回避し、経営陣がより自由に、かつ機動的に経営戦略を実行していくために、MBO(マネジメント・バイアウト)などによる非公開化が選択肢となります。
3. 未公開企業への資金流入の増加
近年、プライベートエクイティ(PE)ファンドなどの未公開企業への投資が活発化しています。これらのファンドは、企業の非公開化を支援し、中長期的な視点で企業価値向上に取り組むことを得意としています。
〇PEファンドによるMBO支援
PEファンドは、MBOの資金提供者として、また経営戦略のアドバイザーとして、企業の上場廃止をサポートします。上場を維持しながらでは実現が難しい大規模な事業再編や、新規事業への大胆な投資などを、PEファンドとの連携によって実現しようとするケースが増えています。
〇非公開化による企業価値向上への期待
PEファンドは、上場企業が抱える短期的な業績プレッシャーや開示義務から解放されることで、企業本来の価値が発揮されやすくなると見ています。
4. 事業承継とM&A戦略の一環
中小企業においては、後継者不足が深刻な問題となっています。事業承継の一環としてM&Aが活発に行われる中で、上場廃止が選択されるケースもあります。
〇友好的買収による非公開化
買収側の企業が、買収対象の企業を完全に自社の傘下に収め、統合をスムーズに進めるために非公開化を選択することがあります。これは、買収後の迅速な意思決定や、グループ内での効率的なリソース配分を目指す上で有効な手段となります。
〇非公開化による事業再生
経営が厳しい状況にある企業が、新たな株主の元で抜本的な事業再生を図るために、上場廃止を選択することもあります。非公開化することで、外部からの制約を受けることなく、事業の立て直しに専念できる環境を構築します。
5.まとめ
上場廃止は、企業の経営戦略の多様化と、市場環境の変化が複雑に絡み合って増加している現象です。短期的な株価変動に一喜一憂せず、中長期的な視点で企業価値向上を目指すための戦略的な選択肢として、今後もこのトレンドは続くと考えられます。
ビジネスパーソンとしては、上場廃止が単なる「撤退」ではなく、企業の「新たな挑戦」の一環として捉える視点を持つことが重要です。



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