なぜフリーランスは会社員への逆戻りを選ぶのか
- LAPIN PDG
- 3 日前
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〜自由への憧れから現実へ〜
近年、「自由に憧れてフリーランスになったものの、数年で会社員に戻る」という現象が増加しています。この動きは、多様な働き方が広がる現代において、私たちが仕事やキャリアに求める「本質的な価値」について深く考えさせられるものです。
なぜ、一度手にしたはずの「自由」を手放し、組織に戻る選択をする人がいるのでしょうか。その背景にある、フリーランスの「現実」と、会社員という働き方が持つ「再評価された価値」を解説します。
1. 「自由」の裏側に潜む現実的な課題
多くの人がフリーランスに抱くイメージは、「時間や場所に縛られない働き方」「自分の好きな仕事を選べる」といった「自由」でしょう。しかし、その裏側には、想像以上に重い責任とリスクが存在します。
(1)収入の不安定性と経済的な不安
最も大きな理由の一つは、やはり収入の不安定さです。
・案件獲得のプレッシャー
常に自分で案件を獲得し続けなければならず、営業活動に追われます。案件が途切れることは即座に収入減に繋がります。
・「食えない」現実
すべてのフリーランスが活躍できるわけではありません。競争激化や単価下落により、望む収入を得られないケースも多々あります。
・将来への不安
会社員のような安定した昇給や退職金がなく、自ら年金や保険を準備しなければならないため、「長期的なキャリアや老後」に対する不安が募ります。
(2)社会保障/福利厚生の壁
会社員が享受している社会保障(厚生年金、健康保険など)や福利厚生(有給休暇、各種手当など)がないことも大きな負担となります。
・病気や怪我のリスク
体調を崩せば「働けなくなり、収入が途絶える」というリスクに直面します。有給がないため、休むことへの精神的ハードルが高まります。
・税務・事務処理の負担
確定申告、税金、保険料の管理など、本来の仕事以外の事務作業に時間と労力を割かれます。
(3)孤独感と成長機会の限界
「すべてを自分で決められる」ことは、「すべてを一人で抱え込む」ことでもあります。
・精神的なプレッシャー
相談できる同僚や上司がおらず、仕事のプレッシャーや責任を一人で負うことによる孤独感や精神的疲労が蓄積します。
・スキルの停滞
既存の得意分野の仕事に集中するあまり、新しい技術やマネジメント経験など、「会社のリソースを活用しなければ得られない」成長機会を失い、自身のキャリアの限界を感じることがあります。
(4)フリーランスの5年生存率
フリーランスを5年後も続けられている人の割合は、およそ16%前後とされています。経済産業省の「中小企業白書」などのデータによると、個人事業主(フリーランス)の約3割以上が1年以内に廃業し、1年後の廃業率は約38%、2年で24%、3年で約20%、5年続けられる人は約16%に減少します。このことから、最初の1~3年が特に厳しい時期で、その壁を超えれば継続率が上がる傾向があります。
また、フリーランスエンジニアの調査でも、2年から5年未満が約31%で最も多く、8年以上継続は約15.5%。同様に数年以内で離脱が多いことが示されています。
2. 会社員という働き方の「再評価された価値」
フリーランス経験を経て会社員に戻る人たちは、単に「挫折した」わけではありません。彼らはフリーランスとして活動したからこそ、組織の中で働くことの「真の価値」を再認識しています。

3. ビジネスパーソンへの示唆
〜ハイブリッドなキャリアの可能性〜
この「フリーランス出戻り現象」は、企業やそこで働く私たちに重要な示唆を与えます。
(1)企業側への示唆
〜経験者採用の好機〜
企業にとって、この「出戻り組」は非常に貴重な人材です。
・即戦力と経営感覚
フリーランスとして培った即戦力となるスキルに加え、自ら案件を獲得・管理してきた「経営感覚」や「コスト意識」を持っています。
・組織適応力の向上
自由と責任の両方を知っているため、組織の安定性と自分のスキルを両立させる働き方を志向しやすく、高いパフォーマンスが期待できます。
(2)個人側への示唆
〜柔軟なキャリア構築〜
「会社員→フリーランス→会社員」というキャリアパスは、もはや「失敗」ではありません。
・フリーランス期間は「武者修行」
独立期間は、自分の市場価値を測り、特定のスキルを極めるための「戦略的な武者修行」と捉えることができます。
・最適な働き方を流動的に選択
ライフステージや経済状況に応じて、自由度が高いフリーランスと安定した会社員を流動的に選択するというハイブリッドなキャリア構築が、今後の主流になるでしょう。
「自由に憧れて」という純粋な動機は、時に現実の壁にぶつかります。しかし、その経験は決して無駄ではなく、その後のキャリアをより豊かにするための貴重な財産となるのです。私たちは、一つの働き方に固執せず、それぞれの段階で最適なバランスを見つける柔軟性を持つことが求められています。
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